イジワルな恋人


亮の背中を見ていると、香奈ちゃんが小声で話しかけてきた。

「桜木さんって、見た目と違って優しいんですね! 

なんか見てるだけで先輩の事大切にしてるのがわかりますよー。すっごいお似合いだし!」


香奈ちゃんの言葉に、あたしは恥ずかしくなりながら顔を緩ませた。


「……でも、付き合ってるなら、なおさら嫌ですよね」


さっきまでのトーンとはまるで違う声で言われて、少しだけ戸惑う。

だけど、佐伯さんの事を指している事が分かって……素直に頷いた。


「……うん」

「あたしなんかより、先輩の方がずっと嫌な思いしてたんですね……」


香奈ちゃんの沈んだ表情を見て、うっかり本音を言っちゃった自分に気付く。

落ち込んだ空気を明るくしようと笑顔を向けた。


「そんな事より、仕事しなくちゃね! あたしソファー席の掃除が途中だったんだ。

香奈ちゃん、何かあったら呼んでね」


香奈ちゃんの笑顔を見てから、急いで持ち場に戻った。


< 291 / 459 >

この作品をシェア

pagetop