イジワルな恋人


「……亮?!」


あたしの呼びかけに、少し息を切らせた亮が驚いたように振り向く。


「……は? 奈緒?」


亮は少し戸惑いながらあたしを見て、一歩ずつ近づく。

まじまじと見つめられて、ドキドキのピークに達して……思わずうつむいてしまう。


「なんだよ……心配させんなよ。

遅いからまた質の悪い奴らに呼び出しでもされてんかと思った。……おまえ髪どうしたんだよ」

「……キスマーク隠しのために、梓が巻いてくれたの」

「へぇ……」


亮がふわふわ揺れる髪に指を絡める。


「……っ」


近づいた亮の胸が、あたしの視界をふさぐ。

亮の吐息が頭にあたって、亮の香りに包まれて……のぼせそう。


「……いんじゃねぇ?」


頭の上から降ってきた言葉に、パっと顔をあげた。


「……行くぞ」

「うん……」


さっきとは違って、淡々とした言葉を残して亮が歩き出すから、あたしもその後ろを歩く。


『いんじゃねぇ?』

ってことは、変じゃないって事だよね……?





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