イジワルな恋人
「知ってんなら話が早いな。
……奈緒のバイト先にもその事を知っている女がいて、周りにバラそうとしてる。
そんな噂がまわったら、少なからず奈緒が傷つくと思う」
「……大半の人間は気にしないとは思うけど。
でも……質の悪い奴らは、面白がって色々悪く言うかもな」
中澤が深刻な顔で答えた。そして、俺に視線を移す。
「どうするんだよ」
「……俺がキスしたら黙ってるなんて言ってるけど、物分かりいい奴じゃねぇし、どのみちバラす気だと思う」
「……じゃあどうするんだよ」
「だからそれを相談してんだろ?!」
声を荒らげると、そんな俺に中澤がため息をつく。
「……前、水谷の家に線香上げにいった時。
水谷、幸せになるって言ってた。
桜木に言われて、そうならなきゃダメだって気付いたって。
……俺には、『桜木と幸せになる』って聞こえた」
中澤が軽く笑って話を続ける。
その笑顔は、少し悲しそうだった。
「傷ついたにしたって、おまえが傍で支えてやればいいんじゃないのか?
そうすれば……水谷は、ちゃんと立ち直れるんじゃないのか?」
少し雲の多い空を眺めながら、黙って中澤の話を聞いていた。