イジワルな恋人


【亮SIDE】


思わせぶりな事言いながら涙目で見てくる奈緒に、鼓動が高鳴っていた。


苦しさに似た切なさが身体を支配して、感情をそのままに奈緒を強く抱き締めた。


小さな身体が、

香水の香りが……気持ちに拍車をかける。


「……今日、俺の部屋来れば?」


しばらく固まっていた奈緒が、腕ん中でようやく震える声を出す。


「それって……」


だけど、それだけ言って止まった。


答えを少し待って……。

でも、返事ができずにいる奈緒に、ふっと笑みを零す。


「……冗談だよ。んな困った顔してんじゃねぇよ。

……そろそろ戻らねぇと」


小さく笑いながら、奈緒から手を離す。


「いつまでも固まってんなよ。戻……?」


背中を向けてドアに向かう俺の腕を……、奈緒が掴んだ。


振り向くと、すぐ後ろに顔を赤くした奈緒がいて……。


「……行く」


……確かにそう言った。


「……じゃあ後でね」


目を合わさずにドアを開けて出て行く奈緒の足音を……背中で聞いていた。






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