イジワルな恋人
奈緒に腕を掴まれたままの状態から、身体が動かない。
……まじかよ。
5時間目の授業開始を伝えるチャイムが鳴っても、その場所を動けずにいた。
あいつ……意味わかってんのか?
『……行く』
『……じゃあ後でね』
頭の中で……さっきの奈緒の言葉がリピートする。
途中から授業出んのも面倒で、5時間目が終わってから教室に戻った。
「あ、亮、おまえさっきの授業どこいたの?」
教室に戻ってぼんやりしていた俺に武史が話しかけてきた。
「……どっかの使ってない教室」
「え?! もしかして奈緒ちゃんも一緒に?!
……亮、いくらなんでも学校でエッチしちゃ」
「してねぇよ!!」
珍しく大声をだした俺に、クラスが少しざわめく。
そんな教室に眉をしかめると、目の前の武史も驚いた表情を向けていた。
「……おまえ何怒ってんの?」
「……何でもねぇよ」
驚きと興味半々の武史の目から顔を背ける。
……おまえが、タイミングよくそんな話題出すから。くそっ。