イジワルな恋人
「じゃあ一緒に帰るか」
「え……」
聞き返している間に、抱き締めていた鞄を奪い取られる。
「フリっつっても、周りには普通に付き合ってるように見せなきゃなんねぇし。
一緒帰るのが一番手っ取り早いだろ」
「……確かに」
ドアを開けようとした桜木先輩は、その手を止めるとあたしを振り返った。
そして、もう一つ命令する。
「それと、俺の事は名前で呼べ。俺もそうするから」
桜木せ……亮の言葉に、素直に頷いて、二人で並んで学校を後にする。
いくらフリって言っても、「付き合う」って言葉がなんとなく恥ずかしい。
そんな事を思いながら亮を見上げると……あたしを見てた亮と視線がぶつかる。
「……何?」
「車、乗れよ」
「あ、」
いつの間にか目の前には亮の車があって、あたしは促されるまま後部座席に乗り込んだ。
「……おじゃまします」
亮もそれに続いて、ドアが閉まると車が静かに走り出した。