イジワルな恋人
少ししてから、北村さんの運転でバイト先に向かった。
一緒に行くってきかない亮を、関先輩が止めてくれた。
もっと4人でいたい気もしたけど……、それよりも気になる事があって部屋を出た。
バイト先には佐伯さんがいるかもしれない。
……だから行きたかった。
あのまま、逃げたくなかった。
裏口から入ると……従業員室に佐伯さんの姿があった。
あたしが叩いた頬には、大げさに湿布が貼ってあって……。
佐伯さんはあたしに気付くなり、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「あれー、水谷さん。あんな事しておいてよく来れたね」
無視して、ロッカーから着替えを出す。
多少の苛立ちは感じたけど、佐伯さんの頬の湿布が、亮を思い出させて……あたしの感情を抑えていた。
「まさか亮くんがかばうとは思わなかったけど……今日も亮くん休み?」
悪びれもしないで話しかけてくる佐伯さんに、うんざりする。
心の底から嫌で仕方ない。
……なんで、先生はこんな人を信じるんだろう。
人の事、勝手に『優等生』っだってはやし立てるくせに、あたしの言葉は信じてくれなかった……。
聞いてもくれなかったのに……。
亮の事を考えて、きつく歯を食いしばった。