イジワルな恋人
「なによ……被害者ぶるのもいい加減にしてよっ!」
突然の大声に……、
あたしはドアノブに伸ばそうとした手を反射的に止めた。
振り向くと、あたしを睨みつける佐伯さんの姿があった。
その目には……、うっすらと涙が浮かんでいるように見えた。
「……なに?」
戸惑いながらも聞き返すと、佐伯さんはあたしを睨んだまま答える。
「あの事件で……アンタは被害者だからってみんなに同情されて……っ、
あたしはっ、加害者の親族だからって後ろ指指されてきたのよ?!」
「……っ」
佐伯さんの言葉に、声が出なかった。
事件後、確かにいろんな人に同情はされてた。
決して心地いいものではなかったけど……。
立ち上がった佐伯さんは、詰め寄ると、あたしの髪をつかんだ。
「……佐伯さっ……痛っ」
「大体アンタが引き起こしたような事件じゃないっ!
みんなに愛想振りまいてるからあんな事になったのよ……っ!
アンタのせいで……、あたしがどんだけつらい思いしてきたか分かってるっ?!」
いつもの甘えたような口調とは違う佐伯さんの声が、部屋に響く。
佐伯さんは取り乱していて……少し息を切らせて顔を赤らめていた。
いつもと違う佐伯さんを、キっと睨みつける。