イジワルな恋人


「つぅか、バレバレだし。おまえら分かりやすすぎだから」


呆れたように笑われて、あたしは苦笑いを浮かべた。


「ま、これからも仕事仲間だし仲良くやろうな」


店長に明るく言われて、車を後にする。

雨の降りしきる中、小さくなっていく、店長の車のテールランプを眺めていた。



……あたしの事を知っていた店長は、あたしがバイト面接にきた時どう思ったんだろう。


事件を引きずっていたあたしを、どんな気持ちで見ていたんだろう。


聞きたいことはたくさんあったけど、特に口にしなかった。

店長は、バイトの面接の時、あたしを拒否する事だってできたのに……受け入れてくれた。

それが、色んな葛藤の中で決めてくれた事だったんだと思うと、聞けなかった。



あの事件が

それぞれの心にまだ残っていることは明らかで……。


加害者の家族だって事で、店長だって何かしら嫌な目に遭ったりした事は簡単に想像ができた。

その中で自分と一緒に働いてくれた店長に、少し気持ちが暖かくなった。


『仲良くやろうな』


その一言から……、店長の優しさが伝わってくるみたいだった。



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