イジワルな恋人
「水谷!」
後ろから浴びせられたライトと同時に声がした。
「送る」
振り返ると車の運転席に店長の姿があって。
少し躊躇した後、制服のままの店長に頭を下げて助手席に乗った。
「……佐伯さんは?」
「あのまま帰したよ。……働ける状態じゃないしな。
しかも俺も出てきちゃったし今頃店大変かもな」
店長の言葉に、笑みがこぼれる。
でも……
思い出される佐伯さんの姿に、すぐにそれは表情から消えた。
あんな取り乱した佐伯さんは、見たことがなかった。
あたしから見る佐伯さんは、いつも自由で自分勝手だった。
……本当はちっとも自由じゃなかったんだろうな。
ずっと……、あの事件に縛り付けられてたんだ。
化膿してしまったように痛み続ける胸が、また痛みを増す。
「店長も親戚なんですよね?」
「ああ」
「じゃあ、川口さんのご両親に伝えて下さい。あの時の謝罪を受け入れますって……。
もう……、あたし達の事は気にしないでって……」
途切れがちになりながら言った言葉に、店長は驚いた表情を浮かべて……ゆっくりとうなづいた。
「……わかった。ありがとう。
……水谷が明るくなったのは、桜木の影響?」
店長の言葉に、慌てて運転席を振り返る。