イジワルな恋人



【奈緒SIDE】


胸が異常なくらいの速度で動いていた。

あんなに男の人とくっついたのなんて、初めてだ……。

ひょろひょろして見えるのに、結構がっちりしてた……。


みんな……普通のカップルは、こんな事を普通にしてるんだよね? 

……信じられない。


真っ赤に染まった顔と、限界まで上がった心拍数に気づかれないように、わざと亮から顔を背けた。


「……あの、……ありがとぅ」


お礼を言うときは、相手の目を見て言うように。

そう教えられてきたけど……。どうしても今はそれができなくて。


あたしの言葉に、亮は振り向いたみたいだったけど、あたしが顔を背けたままだったからか、また視線を外に移した。


……怒ったかな?


助けてもらったのに顔も見ないままだし。あたし態度悪い……。


流れる景色を眺めながら、自分の態度にため息を漏らした。



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