イジワルな恋人
「着きましたが……」
駅ビルに着くまでの約5分、亮もあたしもお互いにそっぽを向いたまま一言も話さなかった。
そんな気まずい空気の中、遠慮がちに聞こえた北村さんの言葉に、亮が身体を起こす。
「……降りるぞ」
「うん……」
俯いたまま亮の後ろを歩こうとしたあたしに、亮が足を止める。
「どこ行きたいんだよ。おまえが後ろ歩いてたらわからねぇだろ」
そうだけど……。だって……。
「……ねぇ、さっきはありがと……」
なんとなく気まずいままの雰囲気が嫌で、さっきの言葉を繰り返す。
今度は、ちゃんと亮の目を見て。
「……さっき聞いたけど」
亮は不思議そうにあたしを見る。
「だってなんかあれから話さないから……。
あたしが顔も見ないでお礼したからかと思って……」
「別にそうじゃねぇよ」
「……本当に?」
「ああ」
……じゃあなんで不機嫌だったの?