イジワルな恋人
「は、離してっ! こんなの……、こんなの、犯罪でしょ?!
捕まってもいいの?!」
「まぁ、奈緒ちゃん襲って捕まるならいっかなー」
ニヤニヤ笑いながらあたしの顔を触る男に、恐怖から声が出ない。
やだ……っ、やだやだやだ……っ!
気持ち悪い―――……っ!!
近づいてくる男の顔にどうする事もできなくて、思いきり目をつぶる。
そして、唇を噛み締めた瞬間―――……。
「……はい、そこまで」
聞き覚えのある低い声が耳に飛び込んできた。
突然聞こえた声に、男達が一斉に声の主を振り返る。
あたしも涙の滲んだ目で、同じ方向を見た。
「……あき、ら……」
涙越しの目に映ったのは、スーツ姿の男の人を数人連れた亮だった。
亮はあたしに触ったままの男に気付くと、近寄ってきて男を睨みつけた。
「……きたねぇ手で触ってんじゃねぇよ」
亮が男を殴るのを合図に、スーツ姿のSPみたいな男の人達が、あっという間に萩原先輩と男達を押さえつけた。
あたしを羽交い絞めにしていた男も押さえつけられて……。
あたしは地面にしゃがみ込む。