その手に触れたくて

壁に掛けてある時計は10時過ぎ。

補習はきっと午前中に終わる。


隼人が来ても12時は過ぎるだろう…

だから…


「いや、大丈夫だよ。じゃあ今から夏美んちに行くね」

「えっ、もう出れんの?」

「うん、だから行くね」

「はやっ!」


電話口から夏美のケラケラと笑った声が響く。

まだ時間もあるし、隼人には颯ちゃんちに居るって伝えればいっか。


夏美と電話を切った後、あたしはすぐに家を出て夏美の家に向かった。

夏美の家に着き、チャイムを押すと、


「はーい」


と明るめのいつもの夏美の声が飛ぶ。

夏美がガチャっと玄関の扉を開けた瞬間、


「わっ!!」


と勢いよく夏美は声を上げた。

キョトンとするあたしに夏美はマジマジとあたしを見る。


「…な…に…?」


戸惑い気味に呟くと夏美は目をパチパチとさせた。


「え、美月どうした?何かあった?」

「え?何が?」

「だっていつもと雰囲気違うじゃん。髪なんて滅多と巻かないし…」


そう言って夏美の視線があたしの髪に落ちていくのが分かった。


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