その手に触れたくて
「あ、うん…何となく」
そう言って、あたしは曖昧に応えて曖昧に微笑む。
そんなあたしを見て夏美は、ふーん…と言った感じで手に持っていた鞄を肩に掛け、外に出てきた。
「行こっか」
「うん」
「なんかあまりにも暇すぎてさ…、って言っても一人で行くのも…と思って。マジ美月、何か予定あったんじゃないの?」
先行く夏美は後ろを振り返りながら言う。
「あー…、でも大丈夫だよ」
そう言いながら、隼人との事を何て言おうか考えていた。
もしかして知ってるかも知れない。
だと、したら夏美の事だから真っ先に言ってくるはず。
まぁ…、後でいっか。
颯ちゃんちに着くと空き地には、いつも通りあるバイクと原付が何台かあった。
その停めてあるバイクを囲むように数人の男達がバイクをいじっている。
その人達を横目で見ながら、あたしはプレハブの階段を上がった。
ドアを開けると、数人の男達が居てバイクとか車の雑誌を真剣に見ていた。
「あ、夏美と美月ちゃん」
聞き慣れた声が飛び、あたしは声の方に目を向けると窓際でタバコを吸っている、あっちゃんが目に入り、その隣で直司が手を振ってた。