その手に触れたくて
そんな夏美から目を少しずつ、ゆっくりと逸らすと同時に夏美の口から手を避けた。
言うべきか言わないか…
なんて考えてる場合じゃない。現に隼人から電話がある事、自体おかしなもんだ。
言うつもりだったけど、さっき夏美と颯ちゃんの話をしていただけに言いづらくなってしまった。
あたしだけ隼人とくっついた事に…
「…美月?」
「……」
不意に聞こえた夏美の声にハッとし、あたしは慌てて俯いていた顔を上げる。
「あたしの事は気にしなくていいよ。良かったね」
「…え?」
「隼人と…ってかさ、何となく分かってたし」
そう言って夏美は微笑みながらオレンジジュースを口にする。
「えっ、そうなの?」
ちょっとビックリしたあたしに、夏美はコクンと頷く。
「だってこの前突然、美月が帰った時も隼人が追って行ったしさ、いつか忘れたけど美月の居場所聞かれたし…。だから何となくね」
「そっか…。ってか居場所って?」
「ん〜…いつだろ…忘れたけど隼人とお墓で会ったりしなかった?」
そう言われてハッとした。以前、お父さんのお墓で会った事があった。って言うか隼人が突然来たんだけど…。