その手に触れたくて
あの時の事は本当にいい思い出なんかじゃないんだけど…。
あぁ、でも今更になって分かったよ。
あの時、何であたしがお墓にいる事が分かったのか…
「そっか、夏美だったんだね」
チラッと夏美を見るとうっすら微笑んで頷いた。
「あ、ダーリン来たよ」
そう言った夏美はクスクス笑って視線を扉に向ける。
その方向に視線を向けるとダルそうに入って来る隼人が視界に入った。
「ごゆっくり」
夏美は微笑みながら、あたしの肩をポンと叩き、部屋の中央にいる直司達の輪の中に入って行く。
「よぉ、隼人」
隼人に気付いた敦っちゃんが声を掛ける。
「おぉ」
そう言った隼人はソファーに座っているあたしの隣に腰を下ろした。
「お疲れ」
「あぁ」
「出来た?」
「完璧」
「本当に?」
「あぁ。つーか、はいよ」
隼人は手に持っていたビニール袋をあたしの膝に置く。
隼人にチラッと視線を向けながら首を傾げ、そのビニール袋を自分の身体に引き寄せ中身を見た。
「えぇっ!!」
あまりの嬉しさにあたしの声が高鳴り、隣に居る隼人はフッと鼻で笑う。
袋の中にはあたしの大好きなメロンパンがあり、それを袋から取り出す。