その手に触れたくて
「どうした?」
「…え?」
隼人の視線があたしの手に落ちているのが分かる。
「手」
そう言われた途端、何故か言葉を失った。
隼人はゆっくり視線をあたしの目に合わせ、傷口と互いに視線を送る。
「…何もないよ?」
「何もなかったら、んな事しねぇだろ」
「……」
視線を落とす先は手首に貼りつけてある白いガーゼ。
嘘をつこうと何回も思った。だけど実際“どうした?”って聞かれると答える言葉が見つからない。
何とかして言い訳を考えなくちゃって思っていながらも隼人の視線があたしを捕えてて考える案も思い浮かばない。
「なぁ、美月?何かあった――…」
「ごめん隼人!!あたしが悪いの」
「あ?」
隼人の言葉を遮って口を挟んだのは、今まで一言も口を開いてなかった相沢さんだった。
隼人は眉間にシワを寄せたまま相沢さんに視線を送る。
その方向にあたしも視線を向けると相沢さんはあたしを見た後、隼人に目を向けた。
「急いで走ってたら角でぶつかったの。その拍子に美月ちゃんが壁にぶち当たって…手怪我しちゃったの」
“ごめんなさい”
そう、付け加えられて言った相沢さんの言葉に胸が苦しくなった。