その手に触れたくて

相沢さんはあたしが振り向くと笑顔で手を振る。

その笑顔にあたしは申し訳ない気持ちでいつぱいになり、軽く頭を下げた。


隼人に連れられて下駄箱まで行き、靴に履き替える。

そのままあたしと隼人は自転車置き場へと向かった。


さっきまでの事が頭の中を過り…そう思うと左手首がズキズキと痛みだした。

ズキズキと言うかヒリヒリと言うか、とにかく痛い。


「痛いのか?」

「え?」


不意に聞こえた隼人の声に視線を向けると、隼人はあたしの手首を見つめてた。


「手」


そう言ってきた隼人に言われるまで分からなかった。

無意識の内にあたしはずっと手を擦ってた。


「あ、ううん。大丈夫」


そう言って笑みを見せるあたしだけど、やっぱし心の何処かが痛かった。

今更、先輩とはどうなったの?なんて聞ける訳でもなく、ただただあたしは何も言えないまま隠し通す事しか出来なかった。


いつもは駅前のショッピングセンターを用もなく隼人とブラブラ歩くか、颯ちゃんちで集まってワイワイしてるか…


だけど、今日のあたしはそんな気にはなれなく――…



隼人に理由も言わないまま家に帰ってた…。


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