その手に触れたくて
「え?何で?」
「ボーっとしてっから」
「え、別に普通。ってか、お兄ちゃんこそどうしたの?早いじゃん」
あたしには触れてほしくない。あたしの行動に触れて欲しくない。
だからあたしはお兄ちゃんに話を振った。
「一旦終了。また出るけどな」
そう言って手を荒い終えたお兄ちゃんはあたしの横をすり抜けリビングへと入って行く。
お兄ちゃんから手首に視線を落とすと、また痛々しい傷痕が目に入り、あたしの口から重いため息が零れ落ちた。
薬を塗って隠したい…。
取り合えずガーゼまでは大袈裟だから絆創膏だけでも貼ろうと思ったあたしはリビングに入った。
入ってすぐ目についたのは、さっきリビングに入ったお兄ちゃん。
お兄ちゃんは椅子に座ってタバコを吸いながら、誰かと電話をしクスクス笑っている。
そんなお兄ちゃんが電話に集中している間に、あたしは電話機の下にある棚から絆創膏を探した。
探した…
探したんだけど見つからない。見つからないと言うか、その絆創膏がない。
何で?何で?何で無いの?こんな時に限って無いのが無性にイライラする。
早く隠したいのに…早くこの傷痕を塞ぎたいのに。