その手に触れたくて
あれはあたしが中学2年。お兄ちゃんが高校1年の寒い冬だった。
丁度、今と同じ12月――…
喧嘩に明け暮れるお兄ちゃんの周りには見方もいれば敵もいた。
その日の夜、たまたま家にいたお兄ちゃんは突然、顔色を悪くして家を飛び出して行ったのを覚えてる。
突然の出来事で何が何だか分からないまま数時間が過ぎた頃だった。
あたしの耳に入ってきた速報。
それは美優さんの死だった――…
美優さんが何気なく行ったコンビニで出くわしたのが、お兄ちゃんの喧嘩相手の男達だった。
そこで襲われそうになった美優さんは男達を振り切って走り、追われる事に周囲を確認していなかった為、信号を見ていなかった美優さんはそのまま車に跳ねられた。
たまたま目撃者が居てその人が救急車を呼んでくれて運ばれたけど、頭を強く打った美優さんは即死だった。
お葬式に参列したあたしは美優さんの死を受け止める事が出来なかった。でも、あたし以上に受け止められなかったのはお兄ちゃんの方だった。
崩れる様に棺桶を抱き抱えて美優さんの名前をずっと呼び叫んで泣いてた事を今でも凄く覚えてる。
ただただあたしは、その崩れるお兄ちゃんを目から流れ落ちて潤んだ瞳で見つめる事しか出来なかった。