その手に触れたくて

Γちょ、ナオ何してんの!?」


突然、張り上げた夏美の声に思わず視線が夏美へと向かう。

夏美は目を見開き、直司の方をジッと見つめてた。


Γは?何って何?」

Γだから何で鞄持ってんのって!!」

Γ何でって帰るんだろうが」

Γだから何で帰るのよ!!来たばっかじゃん」

Γお前が寝てる俺を連れ出すから、眠みぃんだよ。さんざん俺を振り回しやがって…」


直司は不機嫌にそう呟き、顔を顰めた。


Γ振り回してません!!」


きっぱりと言い返す夏美に直司は深いため息を付く。何故かそんな直司にあたしは凄く申し訳ない気持ちになった。

あたしが居ない間、夏美は直司を誘ってたんだと思うと、とてつもなく申し訳なくなった。


Γじゃあな」


そう言って、足を進める直司に、


Γあ、…ごめ――…」

Γ美月ちゃんの所為じゃねぇよ」


あたしが言い掛けた途中、直司は薄ら笑ってそう言った。


Γえっと…」

Γ後は宜しく」


そう言って直司はチラッと夏美を見た後、口角を上げて教室を後にした。


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