その手に触れたくて

夏美に続いて店内に足を踏み入れると、夏美は速攻カウンターに行きメンバーズカードを差し出し、


Γ昨日してもらったのに取れたんですけど!!」


ちょっと反論している夏美の態度に思わず苦笑いをしてしまった。


Γ申し訳ございません――…」


頭を下げて謝る店員を目にした後、あたしも鞄の中からカードを差し出し店内を見渡した。

クリスマスシーズンでもあって店内にあるクリスマスツリーにキラキラと飾り付けがしてある。

雰囲気だけで、もうそんな時期なんだと思うと同時に寂しくなってくるのは何故だろう。


隼人が入院しているから?
それともお兄ちゃん?


考えても分かんないけど何でか不安と寂しさがあたしを襲う。不意に流れ落ちてくる涙の意味も全く分かんない。

誰の為に泣いてんのか、何の為に泣いてんのか…そう考えれば考えるほど分かんなくて、分かんないからこそ最後は自分自身を追い詰めて、あたしの所為なんだって認めてる。


世間は賑わってんのに、あたしだけ…って思うのは駄目なんだろうか…。


< 354 / 610 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop