その手に触れたくて
Γちょ、美月!!」
明るい夏美の声でハッと我に返ったあたしは夏美に目を向ける。
夏美はもうとっくに椅子に座っていて、あたしに向かって爪を見せてくる。
その微笑んだ夏美に近づくと、綺麗にちりばめてあるラメがキラキラと光っていて後もう少しで完成間近だった。
夏美の隣の席に座り、あたしは夏美が終わるまでずっと見てた。夏美が終わってから夏美と交代し、何だか来たにも関わらず、どんなのにするのかとか全く思い浮かばず結局は夏美と同じにしてもらった。
ネイルに大好きな夏美は超ご機嫌で、店を出てからもあらゆるショップを覗き込み、そんな夏美にあたしはただただ着いて行くだけだった。
なんでだろう…
なんで気分が乗らないのだろう。
だけど夏美はそんなあたしに何も言ってこなかった。あたしがいつもと違うって事をきっと分かってると思う。だけど夏美は何も言ってこなかった。
だからそう言う所が敢えて夏美の好きな所でもある。あたしをそっとしてくれると言うか…だからと言ってあたしを一人にさせないと言うか。
きっと夏美はあたしを気分転換に外でツレ回してるんだと思う。ネイルって言ったのも、きっと口実だったんだと思う。