その手に触れたくて
「…ごめん」
また謝る事しか出来なかった。
寒い所為か、それとも今の悲しい現状の所為かは分かんないけど、手が少しづつ悴(かじか)み、目も潤んで来る。
あたしがここに来た意味は何だったんだろうか。
隼人に会えた喜びがあるのに今は切ない気持でいっぱいだ。
会いたくて、会いたくて仕方がなかったのに…
「言いたい事はそれだけ?」
潤んでしまった瞳から今にでも涙か落ちそうだ。
好きだから、好きだから、仕方がなくて、
「無かったら、もう行くけど」
そう冷たく言い放った隼人の腕を、あたしはグッと掴んで引っ張った。その瞬間、隼人の眉が少し中央に寄ったけど、あたしはお構いなしに口を開いた。
「じゃあ…何でキスなんかすんのよ」
「……」
「何の感情もないくせにそんな事しないでよ!!」
思わず張り上げてしまった声と同時に出て来たのは頬に伝う熱い涙だった。
今の今まで大切にしてきたもの。
今まで外さずに身に付けていたのはネックレス。外そうにも外せなかったネックレスをあたしは握りしめ、力いっぱい引っ張って引きちぎった。
そのネックレスを隼人の手に握らせ、あたしは唇を噛みしめながら隼人に背を向けた。