その手に触れたくて

悠真さんに軽くお辞儀をした後、あたしはすぐに部屋へと掛け込んだ。

バタンと倒れ込んだベッドがギシっと弾む。


自分の意思で返すと言ったネックレス。

まだ微かに首元に存在しているかのような違和感。

何気なく首元に手を添えスッと撫で、手を後ろに回すと引き千切った時に出来た小さな傷が手に違和感を覚えた。


今、思うと…


ゴメンね。って、そう言いたい。



いつからなのか分かんなかった。

目を開けると部屋の中は真っ暗で寝ていた事に気づく。

どれくらい寝ていたのかも分かんなくて、あたしは重い身体を起し、重い足取りで部屋を出た。

喉を潤そうと思い、階段を降りてリビングに向かう途中だった。


玄関越しから聞こえてくる声に思わず足を止める。

秘かに聞こえてくる声はどう考えたって、お兄ちゃん。


でも、だけどその声に混じって聞こえて来た声に、あたしは慌てて玄関を飛び出した。







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