その手に触れたくて

「学校帰り、相沢さんが見たんだって。剛くん達とナオ達とあと数人居る所を…」

「……」

「怪しいと思った相沢さんがさ、影から見てたら“カタつけに行くぞ”って言ってたんだって!」

「……」

「それって多分、隼人の所だって言ってた!!剛くん、何食わぬ顔してるけど美月の事気にしてたみたいだよ!!」

「……」

「相沢さん言ってた!!そりゃさ、元はと言えば隼人が撒いた種だよ!でも、みんな気にしてたんだよ!!」


夏美が必死で言ってくる声があまりにも大きくてあたしの耳が少し痛んだ。

徐々に緩まってくる力。


「…どうしよう」


その言葉しか出て来なかった。


「美月、どうすんの?」

「どうすんのって言われてもどうも出来ないよ…」

「隼人に会いに行く?」

「……」

「ナオもきっといると思うよ?って、あー…でもあんま宜しくない場所だし、どうしよう…」


だんだんと夏美の本当に困った声とため息が降り注いでくる。


剛くん達は本当に行ったんだろうか。

俺じゃ何も出来ないって言ってたのに、わざわざ喧嘩を売る様なマネでもすんのかな?


相手がどー言う人達か分かんないけど、権力がないとダメって…


でも、剛くんが言うお兄ちゃんになんて死んでも言えない!!


「…とりあえず行ってみる」


暫く経ってから口にした言葉に戸惑いも少しはあった。




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