その手に触れたくて
「隼人、あのね…」
「お前…もしかして走ってきた?」
「うん」
「馬鹿じゃねーの?」
隼人は薄らと笑みを零す。
「だって…」
「電話しろよ」
「あ、そっか…」
「そっかじゃねーし」
「うん」
そう言ったあたしに隼人はもう一度笑う。
「入れ…ば?寒いし」
「うん…」
隼人の後について家の中へと入る。
懐かしい隼人の家。それをもっと思い出さすのは隼人の部屋だった。
テーブルに無雑作に置かれた雑誌。
何も変わってないあの頃の部屋。
懐かしいその部屋に何でかしんないけど、目が潤んだ。
「どした?」
暖房をつけた隼人は床に腰を下ろし、箱から取り出したタバコに火を点ける。
「う、うん…。あのさ、」
「うん」
「…ごめんね、隼人」
そう言った瞬間、何かの糸がプツンと切れたみたいに、あたしの頬に涙が走った。
「美月?」
潤んだ瞳から見えるのは少し戸惑った表情をする隼人。
口に咥えてたタバコを離した隼人は立ち上がって俯くあたしの顔を覗き込んだ。