その手に触れたくて

「帰って食べる。…ありがとう」

「おぅ」


居心地が悪いなんて初めて思ったかも知れない。

それは“ごめん”って言ってしまった所為なのかは分からないけど、ここまで居心地が悪いなんて思った事はなかった。

だから口数はカナリ少なくて、隼人すら少ない。


だけど“ごめん”って断っときながら、こうやって一緒に居ると気持ちが戻りそうだった。


隼人よりいい人見つけなきゃ。

隼人より好きって想える人を見つけなきゃ。


こんな所で考える事じゃないのに何故かそう思ってしまった。


「…帰る…ね」


暫く経って出て来たのはその言葉。


「あ、あぁ…」


急な呟きに隼人は戸惑った表情を見え、タバコを消して直ぐに立ち上がった。


「あ…、いい。大丈夫だから」


大丈夫。と言う意味を込めてコクンと頷くと、


「歩いて帰ると時間掛んだろ」


そう言って、あたしの横をスッと横切ると同時にクシャっとあたしの頭を撫ぜ部屋を出た。

何なんだろうか。別に喜ぶ事でもないのに、そう言う事をされると嬉しいって気持ちと好きの気持ちが揺さぶる。


だけど隼人と居る事に悩む。

悩むって言うか、なんだかあたしが支配してるみたいで怖い。





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