廃陸の旅団

いつか言う「さよなら」の為に



灰は潮風に乗り、遠く離れた港にまで降り積もっていた。

季節外れの灰色の雪。

そよぐ風は生暖かくカムイの頭を簡単には冷やさせてはくれないようだ。

「おい坊主。おまえらが今回のことを悔やんだって構わねぇ。」

船を降りたオスカーが唐突にそう言う。

「ただよ……何だ、死んじまったやつのことを覚えておくのなら、せめて後悔よりも楽しかった時の記憶を残した方がいいだろう。……それだけだ。」

オスカーは三人をその場に残し消えていった。

喜怒哀楽のどれでもない表情。

カムイの心境を読み取ってあげられないことを悔やみながらも、マールが遠慮がちに言う。

「私達はクラナドと面識がないから、いつかは忘れるのかも知れない。でもカムイは一生忘れられないよね。」

依然としてカムイの表情は変わらない。

それがマールの不安を加速させる。

「……ならやっぱりクラナドだって楽しかった思い出での中で生き続けたいと思うんじゃないかな?ねぇ、カムイ……」

マールの声はカムイに届いていたのだろうか。

海を見つめ続ける横顔は何も返してはくれなかった。

マールはしゅんとして落ち込むが、そんなマールの肩をジンがポンと叩く。

「船旅ってのも疲れるもんだな。あそこの宿に今日は泊まっていこう。これからのことは明日ゆっくり考えよう……な?」

ジンがそう言うとマールは頷いた。

何も反応しないカムイの背中をポンと叩いてジンは宿に入っていった。

マールもカムイを一人残し宿に入る。



誰もいなくなった港でカムイが小さく呟く。

「……クラナド。俺は正しかったのかな?」





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