廃陸の旅団

軍艦都市ケルセウムがサイレンに包まれる。

都市の各地から巨大な火花があがり、B.A.S.E.の本拠地であるアンバー・タワーからも火の手が上がっていた。

「いやぁぁぁあ。」

「助けてくれぇぇっ。」

悲痛な叫び声が響き渡り、市民が一斉に郊外へと避難する。

「こちらです。慌てずに迅速に移動をお願いします。」

リリーは市民を避難所へと先導する任務を与えられていた。

「なにかオカシイ。あれだけの被害なのに敵の姿がない。自然災害にしてはこの――街中を漂うこの殺気はオカシ過ぎる。」

リリーはこれが人為的なテロ行為であると、ほぼ確信していた。

しかし、心当たりは皆無に等しく、1副隊長の根拠のない考えなど上が相手にするわけもなく、リリーはひとり悩んでいた。

「きゃあぁぁあっ。」

「大変だぁ!!子供が爆焔に飲み込まれたぞぉっ!!」

「誰か、誰かぁぁあっ!!」

叫び声に、はっと我にかえるリリー。

自らの任務を果たすことがどれだけ大事かを思い出したのだ。

そして、自分の杞憂などクルーやハイマンス、ローザスなど頼れる者達が感付いていないはずもないと確信した。

「みなさん下がってください!!『ターピュランス』」

火柱に向かっていく乱気流が、一瞬にして火炎を吹き飛ばし、周りの瓦礫すらも吹き飛ばした。

「うわーん。お母さーん。」

すると中から少年の泣き声がして、皆から安堵の息がこぼれる。

「よかった。ボク無事だったのね。さ、ここは危ないわ逃げましょう。」

「うん、ありがとうお姉ちゃん。」

2人が駆け出した瞬間。

わずか先の民家が何かの爆発で吹き飛んだ。

瓦や鉄筋が鋭利な破片となって遥か上空から降り注ぐ。

「くっ。いち、に、さん……16人!?間に合って『神域』!!」

破片が降り注ぐ場所で逃げていた市民に神域をかけるリリー。

降り注いだ破片は神域に触れると、目標を失ったかの様に、力なく辺りに散っていった。


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