廃陸の旅団
「ふむ……動きずらいものだな。不完全に出てきてしまったのだから致し方ないが。」

マザー・ワームは首をゴキゴキと鳴らしている。

「はっ!!」

背後からカムイが切り掛かると、畳まれていた羽を広げて盾にした。

『ガキィィィィン』

まるで鋼鉄を叩いたかのような金属音が響き渡る。

「非力が……」

マザー・ワームはもう片方の羽を勢い良く広げるとカムイを軽々と吹き飛ばした。

「ぐぁあっ。」

「カムイ!!大丈夫!?」

リリーがすぐに駆け寄り、二人が構える。

マザー・ワームは二人をじっと見つめると、大きく舌なめずりをした。

「若き肉が二つ。我が身となるがよい。」

マザー・ワームは飛翔すると2人に襲い掛かる。

「なっ……早っ!!」

一瞬にしてカムイの顔然に現れたマザー・ワーム。

すれ違いざまに鋭い、鳥のような鉤爪で攻撃してきた。

カムイはそれをなんとか孔気刀で受け流す。

「ふむ。良い。実に良い反応だぞ人間。ではこれではどうかな?」

マザー・ワームは着陸すると何かを口ずさむ。

「うそ……これは詠唱!?」

魔獣の中には呪術を扱う種が存在する。

それは稀な人語を操る種の中でも、珍しい特殊な固体に限られるものであった。

「吹き荒べ《ターピュランス》」

マザー・ワームの生み出した乱気流が二人を飲み込む。
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