お嬢様とヤンキー
椎名はユリ子の願いを叶える度に、自己嫌悪に陥る。
ハンドルを握り、ブレーキをこれ以上ないほど丁寧に踏んだ。
ガラスを積んだように慎重な運転。
「椎名の運転、私大好きよ」
「あ、ありがとうございます」
「うふふ。照れてる?嬉しい?」
後部座席から身を乗り出してはしゃぐユリ子。
「あんまり身を乗り出さないで座ってください」
キャッと飛び上がりながら椅子に座りなおすユリ子は、実はちょっとレアなのだ。
外に出たときに被っていたお嬢様の仮面が取れて、悪く言うと品が悪くなる。
でも、そんなユリ子がみられるのは、椎名の前だと緊張の糸がほぐれる証。
椎名はその様子をみると安心する。
「ハァ・・・・・・」
後ろから深いため息。
ユリ子のものだ。
「そんなに嫌なら、家出したらどうですか?」
椎名は時々、意地悪なことを言う。
それは、普段思っていて口に出来ないことばかり。
今回だって、そうだ。
ユリ子はいつも家が嫌だと言うだけで、家を出るとか、親に不満をぶつけることをしないで、ずっと溜め込んでいる。
「駄目よ、それはできないわ」
15歳のお嬢様に、なすすべはなかった。
ちょっとした勇気さえも、ちょっとした考えさえも。