お大事にしてください
いくら暇だと言っても、いつもなら一人くらいは生徒がやって来る。それが今日はいない。誰も来ない。
持ってきていた雑誌も、読み終わってしまった。
「あぁ、暇だぁ。」
椅子の背もたれを使って、思い切り伸びをした。伊織の視線の先には、薬をしまう用具棚があった。
「しかたない。薬の片づけでもするか。」
ポケットに入っていた黒いゴムで長い髪を束ね、白衣の袖をまくった。
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