お大事にしてください
目の玉を右に、左に、また右に、次のお客を誰にするか老人は悩んでいた。
しかし、伊織の事を気に入り過ぎて、他の人間に目がいかない。
「はぁ、虚しい。虚しい・・・ですねぇ。」
老人を喜ばすものが、その灰色に濁った目の玉に映った。
「おぉ、あれは。」
伊織だ。伊織が戻ってきた。
「ふっ、ふっ、ふっ・・・。ふっ、ふっ、ふっ・・・。」
笑いが止まらない。
ショーケースの奥に、急いで戻った。
< 179 / 182 >

この作品をシェア

pagetop