お大事にしてください
目覚める10
「部長、昨日はすみませんでした。」
翌日、美鈴は六郎の席に来て謝った。六郎もそうなのだが、美鈴も同じように他の社員より、早く来る事が多い。美鈴はその時間をねらって、挨拶に来たのだ。
「あ、別に気にしていないから。」
朝の貴重な時間だ。新聞に目を通すので忙しい。視線を美鈴に移さずに返事をした。それはいつもの事の六郎の態度だ。
しかし、それは美鈴にとっては、六郎が怒っているように感じさせた。
「本当に申し訳ありません。どうか、どうか許して下さい。昨日の事、母に聞くまで覚えていなかったんです。まさか・・・。本当にどうお詫びしたらいいのか・・・。」
後半の声は、泣き出しそうな声だ。
しかたなく、新聞を置いた。
「わ、わかったから。そんなに謝らなくてもいいから。」
美鈴は驚いた。六郎の目の下に、とても大きなクマが出来ている。
「部長・・・。どうしたんですか?その顔・・・。」
「やっぱりわかるよね・・・。朝起きたらこうなっていたんだよ。やっぱり・・・わかるよな・・・。」
ため息混じりに、こう言った。
「本当に大丈夫ですか?昨日よりもひどい顔ですよ。」
心配そうだ。
「すまない、美鈴君。ちょっと、コーヒー持ってきてくれないか?頭がボーッとしてしまって・・・コーヒーでも飲めば少しは良くなるだろう・・・。」
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