お大事にしてください
目覚める12
まだ、六郎が社会人になって間もない頃だ。右も左もわからず、ただ先輩社員についてお客様廻りをしていた。
「おい、小田。早く来い。」
この日は五月と言うのに、夏を思わせる暑さだった。遠くで季節を間違えた蝉の声が聞こえる、そんな日だった。
「待って下さい。先輩。」
六郎の先輩は、えらく早足だった。六郎が小走りでやっと追いつく。この陽気でだから、額からは滝のように汗が溢れていた。
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