狐面の主人
視界が狭める。
炎尾の能面と、五穂の唇が交わり、二人の影は重なった。
「……………?……」
虚ろな瞳の奥で、五穂が見たのは、炎尾の面の中の顔。
見える筈だ。しかし、見えはしない。
触れ合う唇の感触も、絡み合う舌の温かみも、本物だというのに、
炎尾の顔が、分からない。
「……っ…ぅ、ぅ…ッ」
これで、もう最後かもしれない。
もう、炎尾は消えてしまうかもしれない。
だが、彼の素顔が見えない。
光が射すような眩さ。涙で潤む瞳が邪魔をし、さらにそれを叶わなくさせる。
切なさと、もどかしさと、愛しさで、五穂の目から、一粒二粒、温かな雫が。
「…えん………っ」
「………五穂…。」
炎尾の声が、風に消えるように、か細くなっていく。