狐面の主人


「あの…、炎尾様は、身の回りの世話役にと、私を雇ったのでございましたよね…?」


「そうだ。」


しどろもどろに言う。

だが炎尾は、少しも急かすような真似はせず、じっくり五穂の話を聞いていた。



「私は…確かに前の御屋敷では、女中として奉公させていただいておりました…。

けれど…家事をこなす下働きでしたので…ましてや主君様の身の回りのお世話とは、どうしたら良いものやら…。」



炎尾はハタと気付いた。

五穂が屋敷を追い出された原因は、これだろう。

恐らく、下働きの彼女に目を付けた主人が、自分付きの世話役と銘打って、辱しめようとしたのだろう。

それを嫌がって抵抗したため、追い出されてしまった…といったところか。


何とも酷い話だ。


< 38 / 149 >

この作品をシェア

pagetop