狐面の主人


「もう嫌…。嫌…。
何故、誰も助けてくれないのですか…?

五穂が一体、何をしたの……?」








時間は夜遅くになっていた。

他の女郎が奥の部屋に引っ込んで、じきに店仕舞いだというのに、五穂はいつまでも泣き続けていたのだ。


両親に捨てられ、前の主人に捨てられ、もう捨てられるのはたくさんだった。

出来ることなら、すぐにでも此処から逃げ出したい。

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