狐面の主人


少女は、河の水車小屋に、彼を連れて行った。



取ったばかりの魚を懐で温め、狐の口に入れた。




彼はもう、少女を警戒することもせず、ゆっくりと、その魚を咬み千切った。

まだ微かに残る冷たい感触。
だが、そんなことは気にならない。
少女の与えてくれる魚を、彼は一匹残らず、その腹に収めた。




少女の目は、笑っていた。












その夜、少女は小屋を去った。


けれどあくる日も、そのまたあくる日も、少女は小屋へ赴き、狐の世話をした。


彼が回復していくと、日に日に、少女の笑顔は明るくなっていった。


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