【短編集】時空郵便

テレビドラマで幾度となく見た。

鉄橋やビルの屋上。

虚ろな目をした人が靴を揃えて置いてその上に生涯最後となるであろう手紙を添える。

柵を越えて身震いをして、見下ろす先に自分の人生の終わりを託す。

そんな人を呼び止め、話を聞いてあげて、柵の内側に引き戻す。

そんな人間になりたかった。

「……なのに」

俺はビルの屋上にいた。

スーツ姿、鞄、左手には今ではなかなかお目にかかれない便箋に綴られた手紙。

靴を脱いで柵の側に揃えて置いた。

デジャヴュの様に思えたのはきっと、何回も見たサスペンスドラマとかハートフルな学園モノドラマのシーンと重なったからだろう。

バカらしいと言えばバカらしいんだけども、オレの最後の選択はその紛い物の常識みたいなものに託されたのだった。

「長かった。いや短かったんだろうけど、俺にとっては長かったんだよ……途方もないほどにさ」

揃えた靴の上に便箋を置いた。

何が理由だったかは思い出せない。

ただこの世界の全てに絶望をしても仕事を夢中でしていた時の自分だけは嫌いにはなれなかった。

だからドラマとは違うかも知れないけど、最後の旅路はこの仕事の相棒とも言える鞄を共にすることにしたんだ。

「さぁて、行こうか」

手提げ鞄の持ち手に無理矢理手首を通して、両手を柵にかける。

抱いた気持ちは諦めが96パーセント。

そしてみっともないんだけど、期待が4パーセント。





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