【短編集】時空郵便
「あなたはあなたでも、依頼人は"未来の"あなた。届け先は"過去の"あなたっス。そこらへんはきっちり区別しないと上司がウルサイんで。」

普通の人間じゃないのに。

どこまでも人間らしい男。

この男に出会ったことで、出会えたことで、僕の運命は変わる。

そう信じて疑いすら持たなかった―

なのに…



「ちゃーんとお勉強してるかしら?」

「し…してるよ、お母さん。」

僕は周りの威圧に、期待に、背くことも反抗することも出来ずにいた。

あの時、何かが変わるはずだったのに。何故?



僕はその後も、心の中でだけ母を否定して。教師を否定して。周りを否定して。

そして。

母の言うとおりに、教師の思うままに、周りの期待するがままに進学をした。


高校に進学した後も。大学に入ってからも、周りの俺への束縛がなくなることはなかった。

「もう…疲れたな。」

その日俺は、フラフラと歩きながらいつもなら絶対に近寄らない場所に入ってしまった。

町外れのとても有名な小道。

「よぉ、兄ちゃん。うかない顔してるねぇー。どう?元気の出る"薬"欲しくない?」

そうか。

俺はドラッグに手を出したのか―
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