♂性別転換♀
一瞬の、触れるだけの僅かな口づけ。
それはあまりにも突然で、事態が飲み込めず、口元に自分の指先を置いた。
リアルに残る、柔らかな感触。
身体がしっかりと覚えていて、一周遅れで羞恥と熱がやってきた。
初めてのチューが、十五年もの間頑なに守り続けた唇が(守ったんではなく攻めなかっただけだが)好きな子と100万ボルトの夜景を眺めながらそっと交わす予定(妄想)だったキッスを。
病室で、非ロマンチックなムードで、幼なじみのジャイアンキャラに、あっさり奪われるなんて。
光、一生の汚点。
頭を左右に振って記憶を振り落とそうとしたが、そんなで忘れられるほど人間の脳は単純な構造であるはずがなく。
嫌な想い出の方が、楽しかった想い出よりも鮮明にコンプレックスとして残るわけで。
数分前の出来事が網膜に焼き付き、俺の頬をさらに紅潮させた。
翼を直視するなんて出来るはずがない。