♂性別転換♀

そこから記憶の鍵穴をこじ開けて、俺のことを思い出させてやる。


扉に吊されたクマのプレート。


このプレートが、俺の部屋の証。


「なによあなた! 警察呼ぶわよ!」


母さんの言葉を無視し、ドアノブをひねる。


「……え?」


そこにある光景に、絶句した。


ベット・机・本棚・テレビ。


そこにあるはずの物が、綺麗さっぱり消えており、空き部屋に変わっていたのだ。


どうして? だってここは俺の部屋。


昨日今日で片づけた? そんなわけない。


無機質なこの空間には、生活感など微塵も感じ取れない。
< 42 / 265 >

この作品をシェア

pagetop