ぼくらの事情
「まぁ、冗談はさて置き。ダブルで失恋しちゃったあの人たちどうする? 励ましてやる?」
本当に冗談だったんだろうか……という疑問を咲奈の中に残し、架はこう言って小首を傾げながら腕組みをしている。
「あぁ。それだったら、ここちゃんの方は咲奈に任せてっ。ちゃんと計画してるから」
絆の失恋に備えての励まし計画は既に咲奈の中にあるらしく、
「何すんのさ?」
「今度の金曜日ここちゃんのお家でお泊まり会するのっ」
いつの間にか約束を取り付けていた咲奈は、ニコニコと楽しそうな声をあげている。
「じゃあ俺がそっち引き受けるから、咲奈が響生を慰めてよ」
「ヤダよ。っていうか、さっき言ってたの実践する気? 架にまでここちゃん取られたら響生、立ち直れないよ」
「はははっ。冗談冗談」
コイツの冗談冗談ほど嘘くさいモノもない。
疑いの眼差しをガンガンに向ける咲奈は、
「まぁ、せいぜい絆嬢を励ましてやってよ」
サラッと笑顔で引き下がる架に、只ならぬ不安の予感がしていた。