影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
しかし。

「ぐぅっ…!」

蹴りを繰り出した筈の初代の方が悶絶する。

見れば甲斐様の苦無が、初代の蹴り足を貫いていた。

咄嗟の判断の時も、その取り回しのよさで即座に攻撃を繰り出せる。

それが苦無の利点だった。

間合いの短さを補って余りあるほどの効果を見せる。

片腕に続いて片足。

初代の動きは封じられていく。

「おのれ甲斐…それが貴様の真の実力…武田信玄を暗殺せしめた貴様の本当の力か…」

血にまみれ、息絶え絶えになり、初代が言う。

「それほどの実力を隠しながら、これまでこの父を愚弄していたか…影で嘲り笑っていたか」

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