影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
私が纏っているのと同じ、藍染の忍装束。

体格からして男だ。

表情までは同色の布で顔を覆っている為にわからない。

だが、そこから覗く眼差しから見るに、隠密特有の心理状態なのは見て取れた。

任務の際には余計な感情は差し挟まない。

人間らしい感情感覚を捨てた、殺人の道具と化した精神状態。

その眼に一種の畏怖を感じていた隙に。

「うっ!?」

私が次に飛び移るつもりだった木の枝に、十枚近い手裏剣が突き立てられた。

枝はその威力で大きく傾いでいる。

既に跳躍に移っていた私に、その枝を回避する術はない。

為す術もなく枝に足をかけ。

「うぁっ!」

その体重で枝が折れ、私が地面へと落下するのは当然の結果と言えた。

強かに尻を打ちつけ、すぐに身動きの取れないまま蹲る。

その隙に。

「!!」

追っ手の隠密は私の目前に接近し、躊躇なく苦無を私の喉元に突きつけた。

「終わりだ、百合」


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