影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
木の枝に飛び移り、足を止める。

その足元に。

「!」

数枚の手裏剣が突きたてられた。

四方剣と呼ばれる十字型の手裏剣だ。

…追っ手か。

裾の短い忍装束を翻し、私は再び枝から跳ねた。

流派によって、隠密の使用する手裏剣は形状が異なる。

四方剣は伊賀の使用する手裏剣。

追っ手は私と同門の隠密という事になる。

しかも。

「チッ…」

衣擦れ、風切りの音すらさせない。

相当の凄腕らしい。

私が如何に速度を上げようと、追っ手は距離を開かれる事なく追跡を続ける。

苦し紛れに私も手裏剣を打ってみるものの。

「!」

その全てがかわされ、苦無(くない)によって弾かれた。


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