影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-

甲斐

戦場からの声が遠く聞こえる。

里から遠く離れた山中。

俺と百合はやっと足を止め、少し呼吸を整える。

…砦を出てすぐに散り散りになっていく伊賀忍軍の生き残り達。

その安否は最早定かではない。

そんな中、百合だけは俺に追従してきた。

「百合…」

彼女よりも早くに呼吸を整え、俺はその顔を見つめる。

「もうお前は俺に付き従う必要はなかったのだぞ?伊賀は…」

そこで一旦言葉を区切る。

口にするのは躊躇われた。

「伊賀は事実上崩壊したのだ…もうお前も俺の配下のくのいちではない。好きなように逃げ延び、自由に生きていいのだ」

口惜しいが事実。

伊賀忍軍は信長めに滅ぼされた。

それは紛れもない事実だった。

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